ソリューション

一つの基盤、大きく異なる四つの制約

エージェントのスタック自体は、業種が変わってもほとんど変わりません。変わるのは、その業種が決して譲れない部分です。金融は監査証跡、製造はオフラインでの稼働、小売は大量処理に耐えること、テクノロジー企業は既存のツールチェーンに収まることを求めます。私たちはまずその制約をアーキテクチャと受け入れ基準に落とし込み、成果の話はその後にします。

金融

金融サービス

多くの金融機関にとって難しいのは、モデルから答えを引き出すことではありません。その答えを後から説明できるようにすることです。調査レポート、内部統制規程、商品規定、当局向けの承認済み文言は十数個のシステムに分かれて存在し、誰が何を見てよいかは担当者ごと、部署ごと、案件ごとに細かく分かれています。

そのため、私たちが最初に設計する制約は追跡可能性です。どの出力についても、どの箇所を検索したか、どのモデルバージョンが生成したか、誰が閲覧し誰が修正したかを後からたどれます。

  • 権限の透過 検索は権限テーブルを別に持たず、元システムのアカウントと可視範囲をそのまま利用します。異動や退職はその日のうちに反映されます
  • 完全な監査証跡 検索した箇所、出典の位置、モデルとプロンプトのバージョンをすべて保存し、期間や案件番号を指定してアーカイブ用に書き出せます
  • 文言の統制 規制対応と内部統制の文言は、人が管理する用語集と優先順位ルールから取得します。モデルによる書き換えは許可しません

代表的なユースケース

  • 調査レポートの統合 開示資料、アナリストレポート、面談記録を、出典を備えた初稿にまとめます
  • コンプライアンス条項の比較 条項のバージョン間の差分を特定し、影響を受ける商品と業務を示します
  • コンタクトセンターの担当者支援 通話中の担当者に推奨文言を提示し、根拠となる商品規定も併せて示します
  • 与信書類の事前チェック 与信申込書類の不備を点検し、不足している書類と確認すべき論点を返します

重視する指標

出典の的中率 人手確認率 初回承認率 1 件あたりコスト
製造

製造

製造業では、知識のほとんどはデータベースにありません。数十年分の図面、設備マニュアル、工程票、そして長く現場に立つ作業者の経験の中にあります。マニュアルの多くはページをまたぐ表を含んだスキャン文書で、工場ネットワークは制限され、外部と一切つながらない現場もあります。

ここでパラメータを間違えることは、使い勝手の問題では済みません。設備の停止や、ロットの廃棄につながります。システムには、推測するのではなく回答を拒否することが求められます。

  • レイアウトを踏まえた文書解析 スキャンされたページを OCR で読み取り、ページをまたぐ表を復元します。ページ番号と図面番号を保持するため、回答から元のページへ直接たどれます
  • オフラインで動作 外部接続のない工場ネットワーク内に導入します。モデル、インデックス、ナレッジのバージョンは一つのリリースとしてまとめて配布します
  • パラメータは原典に直結 工程パラメータは構造化された原典から直接読み出します。該当がない場合や範囲外の場合は回答せず、確認先の担当者を示します

代表的なユースケース

  • 設備マニュアルの Q&A 機種とマニュアルの改訂版を指定して、故障コードと修理手順を探します
  • 工程パラメータの検索 工程票と変更通知をまたいで、現在有効なパラメータと許容範囲を読み取ります
  • 品質報告の分析 ロット内の不良を分類し、ロットをまたいで再発している同じ問題を洗い出します
  • 部品照会と作業票の支援 代替部品を検索し、作業票の項目の入力と点検を支援します

重視する指標

初回の的中率 平均診断時間 拒否の精度 オフライン稼働率
小売

小売&消費財

小売はまず物量の問題として現れます。数万点の SKU、十数のチャネル、毎月の新商品投入。人手ではとても追いつかず、書けたとしても表現がばらついていきます。次に来るのが表現リスクです。広告関連の法規制と各プラットフォームの独自ルールは異なり、最上級表現が一つあるだけで商品が掲載停止になることもあります。

ここで問われるのは、コピー 1 本の出来ではありません。バッチ単位で抜き取り検査し、差し止め、まとめて元に戻せるかどうかです。

  • テンプレートと素材ライブラリ コピーのテンプレートをカテゴリごとに管理し、属性項目から組み立てます。同じ SKU はどのチャネルでも同じ内容になります
  • 表現チェックの最終関門 最上級表現、効能表現、比較表現は生成後に再チェックします。該当した場合は公開を止め、修正案を添えて差し戻します
  • バッチ単位のロールバック 生成、抜き取り検査、公開をバッチ単位で行い、問題が通り抜けたときはバッチ全体を前のバージョンに戻します

代表的なユースケース

  • 商品コンテンツの大量生成 タイトル、訴求ポイント、商品詳細ページのコピーを、チャネルごとの形式で作成します
  • 購買アシスタント 客層と用途に応じて商品を推奨し、その推奨理由も併せて提示します
  • 購入後の Q&A 返品、配送状況、保証規定について、セルフサービスで回答します
  • 販促クリエイティブ 商戦期に向けたコピーの複数案、ショート動画の台本、クリエイティブの初稿

重視する指標

1 点あたりコスト 表現チェックの差し止め率 人手修正率 公開までの時間
テクノロジー

テクノロジー

開発チームに概念の説明は要りません。必要なのは API、クォータ、オブザーバビリティです。実際の障壁は、ツールチェーンがすでに長いことにあります。ソースコード管理、CI、チケット、ログ、データウェアハウス。どれか一つでもつながらなければ、そのアシスタントは誰も開かないタブが一つ増えるだけになります。

この種のプロジェクトで私たちは、単体の製品を納品するベンダーというより、プラットフォームチームの基盤をもう一層拡張する立場で動きます。

  • 既存のツールチェーンに組み込み API、CLI、IDE プラグイン、チャットボットから利用できるため、これまでの働き方を変える必要はありません
  • クォータとコストを可視化 モデルのクォータをチーム別、プロジェクト別に割り当て、呼び出し量と費用は現在お使いのダッシュボードにそのまま流し込みます
  • 自社だけで運用できる ソースコード、デプロイスクリプト、評価セット、プロンプトはすべて自社のリポジトリに置き、自社のリリースサイクルで配布します

代表的なユースケース

  • 開発生産性 コードの説明、テストケースの草案、レビューコメントの一次確認
  • ログとデータ分析のアシスタント 自然言語をクエリに変換し、異常の原因の手がかりも提示します
  • グロースコンテンツの生成パイプライン 多言語のランディングページと販促クリエイティブを大量に生成します
  • 社内ナレッジ検索 ドキュメント、チケット、リポジトリを一つの入口から横断して探せます

重視する指標

提案の採用率 1 人あたり呼び出し数 1 回あたりコスト P95 レイテンシ
シナリオライブラリ

業種を越えて使える九つのシナリオ

この九つのシナリオは、業種を越えて最も応用が利きます。いずれもプロンプトの構造、ツールのインターフェース、評価セットのテンプレートをすでに用意しているため、ゼロから設計する場合に比べて通常 2〜3 週間を短縮できます。

カスタマーサービスと担当者支援

入力:商品ナレッジベース、過去の問い合わせ履歴、サービス規定。出力:そのまま送信できる返信案、通話中の担当者への文言提示、有人対応へ引き継ぐ判断とその理由。

社内ナレッジ Q&A

入力:規程文書、業務マニュアル、議事録、共有ドライブのファイル。出力:出典とページ番号を備えた回答。範囲は、その利用者が元システムで見られるものに限定されます。

開発生産性

入力:リポジトリ、インターフェース仕様書、過去の不具合報告。出力:コードの説明、テストケースの草案、レビューコメントの一次確認、変更が影響する範囲のメモ。

コンテンツ制作

入力:商品属性表、ブランドのトーン指針、禁止表現リスト。出力:チャネル別のコピー複数案とその表現チェック結果。公開もバッチ単位、差し戻しもバッチ単位で行えます。

データ分析アシスタント

入力:データウェアハウスのスキーマ、指標定義、行単位と列単位の権限。出力:自然言語から生成した SQL、グラフの草案、数値が動いた要因の手がかり。クエリは常に表示され、編集できます。

業務プロセスの自動化

入力:現在運用している承認フロー、帳票項目、業務システムのインターフェース。出力:実行可能なワークフローのノード。人による確認ポイント、タイムアウト時の再試行、ロールバック記録を組み込み済みです。

契約書と条項のレビュー

入力:契約書の本文、標準ひな形、社内のリスク条項リスト。出力:条項ごとの比較、逸脱箇所の指摘、修正案。いずれも原文の該当位置にひも付きます。

入札・提案の支援

入力:入札公告、過去の提案書、製品資料ライブラリ。出力:要件ごとの分解、回答案、不足している資格と証憑の一覧。

研修とオンボーディング

入力:職種別の手引き、操作説明動画の文字起こし、よくある質問集。出力:職種別の学習コース、受講中の理解度確認、理解が浅い箇所がわかる進捗統計。

これらのシナリオを支えるプラットフォームモジュールを見る

成果物

各ソリューションで実際に手元に残るもの

業種別ソリューションは提案資料の束ではありません。プロジェクトの終わりに手元に残るのは、継続して保守できるエンジニアリング資産です。引き継ぎ後は、お客様のチームだけでコードを変更し、リリースを作り、不具合を調査できます。

  • シナリオ設計書 業務フロー図、データの流れと権限の境界、異常時とフォールバックの挙動。次の担当者にそのまま引き継げる粒度で記述します
  • 評価セットと受け入れ基準 お客様の実業務のサンプルから作成し、模範解答と採点ルールを添えて納品します
  • ソースコードとデプロイスクリプト 個別開発したソースコード、イメージのビルド、コマンド一つで実行できるデプロイ。自社環境でシステムを再構築できます
  • 運用手順書 監視指標、アラートのしきい値、よくある障害への対応手順、エスカレーション経路
  • 研修資料 職種別の一式。演習課題とプロンプト記述の規約を含みます
  • 稼働後の回帰テスト報告 取り決めた周期で評価セットを再実行し、稼働開始時の基準値との比較と変化点の説明を添えます

受託開発の全工程を見る

診断、パイロット、本番導入、展開という 4 つの提供段階。後の段階ほど期間が長くなり、対象範囲の拡大に伴って効果も高まります

業種ではなく、シナリオから選ぶ

業種別ソリューションは出発点であって、答えではありません。具体的なシナリオを一つと、それを現在どう処理しているかをお聞かせいただければ、1 回の打ち合わせで実現可能性の判断、制約の一覧、受け入れ基準の初版までお出しできます。